レアアースとITの関係とは

レアアースとITの関係とは

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レアアースとITの関係とは

レアアースとITの関係、米中貿易摩擦による中国の対米追加措置としてのレアアースの輸出制限を示唆しているというニュースからみた世界のレアアースと日本のレアアース対策を簡単に紹介した記事です。

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質問者

最近、またレアアースに関するニュースを見るようになりましたが、レアアースとITってどんな関係があるのでしょうか?!

Yahoo!ニュース
中国政府、レアアースの対米輸出規制示唆(TBS系(JNN)) - Yahoo!ニュース
https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20190529-00000071-jnn-int
米中貿易交渉が激しさを増すなか、中国政府はアメリカへのレアアースの輸出を規制する - Yahoo!ニュース(TBS系(JNN))

ドナルド・トランプ米政権による対中追加関税率(米国からの輸入品600億ドル – 約6兆5700億円)を引き上げる方針に対する中国側の対抗策として、対米関税率の引き上げと共に追加措置としてレアアースの輸出制限を示唆しているというニュースですね。

まず最初に。ニュースを読み違えないようにレアアースとレアメタルの違いをはっきりさせましょう!

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Saki

レアアースとレアメタルの違い

Saki

経済産業省「レアメタルのリサイクルに係る現状」より

レアメタル(rare metal)は厳密に決まっているわけではないです。
単純に希少性の高い金属類のことでです。
経済産業省の平成23年(2011年)の定義では、17種類のレアアース(rare-earth)を含む 47種の元素をレアメタルとして指定しています。
つまり、レアアースはレアメタルの一部として扱われています。

レアアースの元素表

一方、レアアース(rare earth)は「希土類元素」のことで、REE(rare-earth elements)と言われることもあります。
フィンランドの科学者が1974年当時未知だった酸化物のことをレアアースと名付けました。
17種の元素があり、これはすべて通商産業省が指定した47種の元素の中に含まれています。

17種の元素は、
・21 – Sc -スカンジウム
・39 – Y – イットリウム
・57 – La – ランタン
・58 – Ce – セリウム
・59 – Pr – プラセオジム
・60 – Nd – ネオジム
・61 – Pm – プロメチウム
・62 – Sm – サマリウム
・63 – Eu – ユウロピウム
・64 – Gd – ガドリニウム
・65 – Tb – テルビウム
・66 – Dy – ジスプロシウム
・67 – Ho – ホルミウム
・68 – Er – エルビウム
・69 – Tm – ツリウム
・70 – Yb – イッテルビウム
・71 – Lu – ルテチウム
です。

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質問者

元素表、懐かしいですね。

参考に出しただけなので、覚える必要はないですよ。

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Saki

IT製品におけるレアアースの役割

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質問者

レアアースって、IT製品にどのように関わっているのですか?

Saki

ハードディスクドライブで使用される磁石で使用されるネオジムやジスプロシウム、コンピュータや電子回路部品で使用されるタンタル、リチウムイオン電池に使用されるリチウムなどは有名ですが、これはレアアースではないです。
とはいえレアアースはIT製品を作る上で、工具や製造機器の部品としても使われるので非常に大切な金属類です。

レアアースの主要用途は、
・セリウム・ランタンなどは、ハードディスク基板、液晶ディスプレイ専用ガラスなどの研磨剤。カメラレンズ・セラミックコンデンサー、LEDなど。
・ジスプロジウムは、次世代自動車モーター用磁石など。
・ネオジムは、HEV向磁石、レーザー、CC触媒、ガラス添加剤、ニッケル-水素電池、セラミックコンデンサーなど、
・サマリウムは、磁石、中性子線捕獲、光ファイバーなど。
・テルビウムは、光磁気ディスク、プリンターの印字ヘッドなど。
・ジスプロジウムは、HEVモーター、レアアースの印字ヘッドなど。
・プラセオジムは、セラミックコンデンサーなど、
・ガドリニウムは、磁石、光学ガラスなど。
・イットリウムは、レーザー、LEDなど。
・ユウロピウムは、LEDなど。
などという具合に、製品や部品の材料や製造工程に使われています。

ITと同様にレアメタルは、産業機械,運輸・土木・建設機械、自動車部品(足回り部品などの重要保安部品や油圧部品など)の添加剤としても使われています。

このように、現在の産業や生活に欠かせない金属類であることから、輸入等で問題が発生するような国際問題があった時に、報道などのメディアで大きく報道される理由が分かったのではないでしょうか。

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Saki

レアアースの原産(採掘)国はどこ?

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質問者

レアアースの主な原産国って、どこなんですか?

本文

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Saki

丁度良い資料が JOGMEC(独法)石油天然ガス・金属鉱物資源機構)より出されていますね。

2017時点で、レアアースは世界の供給の80%が中国で採掘されています。

埋蔵量だけでは言えば、
中国-46%
ブラジル-23%
ロシア-18.8%
以下多数国。
と中国だけで取れるわけではないのです。

ただレアメタルやレアアースの採掘は環境負荷問題があることから、環境を重視する国ではなかなか採掘されにくいことと、人件費等の費用などから中国が多く採掘しているだけと言えるでしょう。

主要原産国である中国は、何かと政治的圧力の材料に

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質問者

それで中国は政治的に利用しているのですね!

Saki

過去に日本も中国から同様の措置を受けた経験がありますよね。

沖縄県の尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件(2010年)後、中国は日本に対する経済制裁の措置としてレアアースの輸出規制を強化しましたね。
このとき、日本政府は中国以外の調達先を確保したのと同時に、代替原料の技術開発に取り組み、リサイクル技術の向上などで中国への依存量を減らし、2011年には中国の日本へのレアアース輸出量は前年比34%減にもなりました。

結果、中国のレアアースの優良顧客であった日本の購入量が減ったことで、中国は他国に格安でレアアースを販売することになり、レアアースの価格が下がりました。
これは当時の中国の誤算だったでしょうね。

しかし米国の場合、リサイクル技術は高いとは言えず、また国民のリサイクル意識が低いため日本が取ったような対応が難しいと言えるでしょう。
ただ、米国にもレアースは埋蔵し採掘もしていますし、不足分は強大な経済力・国力を背景に中国以外からの輸入に切り替えることは可能でしょうし、日本からのレアアース低減などの技術提供などを受ける可能性も高いです。

中国の「レアアース砲」は局部的な効果しかなく、さらなる中国離れが進むだけだと思っています。
一部のメディアは、「米国が怯える」みたいな表現を使っていますが…。

日本または日本周辺ではレアアースの採掘できなのか

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質問者

日本では採掘できないの?

Saki

昨年2018年04月12日の記事によると、日本最東端の南鳥島(東京都)周辺の排他的経済水域(EEZ)に、世界の需要の数百年分に相当する1600万トン以上のレアアース(希土類元素)が存在し、レアアースが特に多く含まれる鉱物を効率よく回収する技術も確立したということです。

nature - Scientific Reportsより
nature – Scientific Reportsより

技術的に確立したとはいえ、コストパフォーマンスとして原産国からの輸入のほうが安上がりなのは確かです。
しかし輸入と止められたとしても生産できますし、これを材料に中国などからの政治的圧力に対しての交渉材料になることは確かです。そういった意味では、日本近海に埋蔵するメタンハイドレートも同じですね。

日本のレアアースのリサイクルなど

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質問者

日本ではレアアース使用の削減などはしているのですか?!

Saki

日本では安定供給の確保が政策的に重要であるものとしてリサイクルの重要性を提示しています。

リサイクル検討優先鉱種(14)

レアメタル
・タングステン(W)、コバルト(Co)、リチウム(Li)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、タンタル(Ta)

レアアース
・ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ジスプロシウム(Dy)、ユウロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)・イットリウム(Y)

リサイクル検討優先鉱種14鉱種のうち、既に工程内リサイクルが相当程度進んでいる鉱種、現時点でリサイクル技術の目処が立っていない鉱種等を除いた5鉱種(W, Co, Ta, Nd, Dy)について、リサイクルを重点的に行うべき鉱種として具体の検討を進めることを提案し、いくつかは実施されています。

削減・リサイクル技術としては、
・添加剤の拡散最適化による削減
・酸化セリウム系研磨剤の再利用
・蛍光灯などに使われた蛍光粉の回収
・エアコンや洗濯機、ハイブリッド車などからのレアアース磁石回収
・ハイブリッド車のニッケル・水素充電池からのミッシュメタル回収
・永久磁石を用いないモーターの使用 (スイッチトリラクタンスモータ)
などがあり、この中のいくつかは、すでに経験または見聞きしたものがあると思います。

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質問者

リサイクルの大切さがよく分りました。

使用済蛍光灯の回収は身近ですよね。

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Saki

レアアースを使わない技術も

Saki

特にモーターはレアアースの使用を抑えたモーターの開発が盛んです。
レアアースを減らすことで、モーター自体の重量を減らすので、効率が上がるという効果もあります。

2014年には、日立製作所が世界最高レベルのエネルギー効率96%を実現したレアアース使用していない産業用モーターを開発しています。

2016年には、レアアースの一種のジスプロシウムなどの重希土類を一切使わないネオジム磁石を、ホンダと大同特殊鋼がハイブリッド車(HV)用駆動モーター向けとして世界で初めて実用化しています。

最近だと、ドローンにもレアアース不使用または減らしたモーターが使われるようになっています。

また、ガラス表面の研磨などにレアアースの一つ「セリウム」が使われていますが、2012年には、立命館大学と研磨工具メーカーの九重電気(株)がセリウムの使用量を50%も低減した新しい研磨工具(研磨パッド)の製品化に成功しています。

このように、価格の不安定なレアアースからの脱却も進んでいます。

IT製造に関する技術も今後レアアースの使用量を低減または不使用のものもでてくると思います。

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質問者

今後の新技術の発明や開発など期待できそうですね。

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